技術の進化と同質化する営業について考える

マーケティング

属人化の代表格と言われた法人営業

経営や管理層は仕事を属人化するなという。そのほうが業務の質を維持し、規模拡大するのに都合が良いから。企業の論理としては属人性を省くことで、業務内容を明確に定義し、アウトプットの管理や評価ができるようになるからだ。

そういった背景もあり、あらゆる仕事は定型化・マニュアル化されてきた。また定型化された業務は必然的に給与水準も下がってくる。

AIや技術の進化であらゆる職業が定型化・自動化されると言われてきた中でも、法人営業という仕事は属人的要素が強いため、ある一定水準の能力が必要と言われてきた。それは複雑な顧客の承認フローを理解し、契約をクロージングする必要があるからだった。

ただ、そんな法人営業の世界でも近年定型化の動きを感じることが業務の中で増えてきた。特にSaaSベンダーの営業と対するときにその傾向を強く感じる。

なぜSaaSベンダーなのか

なぜSaaSベンダーの営業がマニュアル化されている(マニュアル化が進んでいる?)と思われるのか理由を考え、仮説も含め次の4つがマニュアル化が進む要素ではないかと推察する。

  • パッケージ製品を販売している
  • 短期間で規模を拡大している
  • 被雇用者層の意識変化
  • インサイドセールスの発展

パッケージ製品を販売している

SaaSというサービスの特性上、特定のアプリケーション(製品)を販売しているため、顧客毎のカスタマイズ要素が少なく、セールストークをマニュアル化しやすい。

これはSaaSではなく、BtoCの完成品メーカーであれば当てはまるとも考えられるが、BtoCの販売現場でマニュアル化が進んでいることとも符合する。

短期間で規模を拡大している

SaaS事業者に限らず、IT系のスタートアップでサービスが当たれば数年で人員規模が10倍などといったことは珍しくない。昨今の人手不足の中、急速に規模を拡大するためには人的リソースの確保というのは大きな経営課題の一つであり、特に一定以上の専門スキルをもった人材登用は簡単ではない。

スキルのある人間が採用できないのであれば、スキルがなくてもできる業務に落とし込む必要があり、現在の社会情勢の中で規模を拡大するためには営業業務ですらも定型化することが避けられないのではないのではないか。

被雇用者層の意識の変化

最近の当社へ入社する若手(20代)を見ていると、仕事への意識が変わってきたことを感じる。

業務内容はマニュアル化されていて、それを教わった通りに実行するのが仕事。というような受け答えを見ることが増えてきている。これは超売り手市場と呼ばれる市場環境や、世代による価値観の変遷の一部のようにも感じる。

彼らはマニュアル化されたものに抵抗が少なく、いかに再現性を高めていくかに興味があるように思う。自分の中でノウハウを磨き、その結果として自分の能力や特異性をアピールすることを重視してきた私はもう古い世代の人間なのかもしれない。

インサイドセールスの発展

インサイドセールスの発展だけに留まらないがBtoBマーケティング理論の発展の成果もあると思う。BtoBにおける営業プロセスが細分化されたことで、フィールドセールス、インサイドセールス、さらには提案作成(プリセールス)といった業務分担が可能になったこと。

また業務分担を支える仕組みが提供可能なIT環境が整ったことも大きな理由だと考えると、まずIT業界の特にSaaSの分野で営業業務の定型化が進んでいるという点に納得感が出てくるように思う。

さいごに

働き方改革が叫ばれる中、業務の効率化の一環として定型化が進むのは生産性を上げるために良いことだと思うが、前述のように定型化された業務は給与水準が下がり、単純なこなす物量は増える傾向にある。

また分業化されることで、ボトムアップを含め全体の業務品質は向上するだろう、ただその中で一歩抜き出た存在になるのは、これまでの時代に比べより大きな努力が必要になるように思う。

それは結果的に、これまで中間層の一部を担っていたBtoB営業という職種が中間層ではなくなってしまう序章のようにも思えてくる。そしてその流れはあらゆる職種に波及していくのかもしれない。

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